世田谷区の坂道

 

 東京23区南西端区の南を流れる多摩川に沿って連なる武蔵野の台地には名前のある坂道だけでも50数か所ある由、資料不足の所在地不明分については今後に委ねて今回は区南西部の国分寺崖線と言われる段丘を上下する坂道の探訪記とします。多摩川を隔てた彼方に神奈川県相模野の丘を遠くに望む町の坂の景色はそれぞれ明快で健康的な印象でした。


 

寮の坂

大田区田園調布の西隣り世田谷区尾山台一二丁目境にある坂。坂上方向の北を走る環八通りから南の多摩川方向へ下る坂は途中にある宇佐神社の東を通りその別当寺と思われる伝乗寺前に出ますがこのお寺の五重塔の芸術的美観は坂道歩きの御利益と思えるものです。

 

 

等々力の坂

東急大井町線等々力駅南の環八通りを渡った先、等々力渓谷隣接東の等々力不動前の坂。大都会の一角に存在する正に深山幽谷の趣の渓谷と太古の遺跡御岳山古墳の脇を貫く現代の新坂の妙と言う感じの坂途中からは多摩川の南遥か横浜ランドマークタワーが見えます。

 

 

明神坂

上野毛二丁目と野毛三丁目境の坂は環八通り多摩川IC第三京浜道路の西にあり、環八の坂上方向から南西坂下の丸子川に架かる明神橋へ下ります。坂途中に坂名を刻んだ小さな石柱があり地元の主要道だったようです。ここへは東急大井町線上野毛駅が最寄りです。

 

 

稲荷坂

東急大井町線上野毛駅南の環八通りを渡った先を上野毛自然公園を指して行った先の坂です。坂の東側は上野毛自然公園で西側一帯が五島美術館の地域、坂途中に坂名由来の稲荷神社があり古くから地元の人々と共にある坂はここでも国分寺崖線の斜面にありました。

 

 

 まむし坂 

東急大井町線上野毛駅の西にある玉美術大学キャンパス北西側道を南西に進み湾曲しながら坂下の筏道へ下る坂。坂は大きく蛇行しながら上野毛の丘上から玉川の平地に下っておりその様子からの命名か実際にマムシも多かったはずと思われる国分寺崖線の坂道です。

 

 

行火坂  

坂途中にある行善寺に因み別名を行善寺坂とも、また大山道と言うようで大山詣での古道だったらしく坂下丸子川の先を行けば多摩川べりの「二子の渡し場跡」へ出る道の由、坂の場所は玉川二丁目と瀬田一丁目境辺で東急大井町線二子玉川駅の北300米ほどです。

 

 

慈眼寺坂 

小豆沢3丁目4丁目境の体育館通りを、坂下環八通り近くから小豆沢公園に沿って東南方向へ上る坂。東京メトロ三田線志村坂上駅南口の中山道を渡って一里塚通りを行けば魚籃坂上の体育館通りです。魚籃とは魚入れのビク水辺に近い土地の名残りですか。

 

 

 

神明坂  

東急田園都市線二子玉川駅の北西方向の国分寺崖線にある坂。同じ崖線の東にある行火坂が大山道の行善寺坂ルートと言うのに対してこの坂野ある道を慈眼寺ルート言うようで丹沢大山詣での昔が偲ばれる坂です。坂下はいずれ東の行善寺道と多摩川畔で合流します。

 

 

馬坂 

東急田園都市線二子玉川駅北西の丸子川近くの岡本静嘉堂緑地や瀬田四丁目旧小坂緑地に近い瀬田四丁目と岡本一丁目境界にある坂。坂下の大蔵通りから湾曲しながら北へ上る坂近くに静嘉堂文庫・小坂武家屋敷門など見どころの点在する古くからの坂道のようです。

 

 

おんな坂

国分寺崖線の高台上にある岡本八幡神社脇を神社東側から境内脇へ上る坂。これに対する男坂は鋭角に落ち込むような急な石段坂で小ぶりな神社本殿ながらキリリとした趣のお社でした。近くの岡本静嘉堂文庫や岡本公園民家園などゆっくり見学してみたいものです。

 

 

新坂

東十条駅のある中十条2丁目3丁目境の交番前にある坂。駅南口の十条跨線橋西にある子育て地蔵尊に因む立派な祠が目印、ここは昔からの街道跡で地域の大切な場所であったことが坂標柱などから教えられますが、確かに、印象の良い坂道と感じました。

 

 

岡本三丁目の坂

世田谷区内を北西から東南へ連なる国分寺崖線と言う武蔵野台地と多摩川低地を分かつ崖地の上からは南西方向に神奈川県のさがみ野の伸びやかな風景が遠望でき気分爽快の気を起こさせますが、その中で秀逸とされているこの地点の富士見は確かに一幅の絵画です。

 

 

畳屋坂   

小田急線成城学園駅東の世田谷通り近くの砧七丁目と成城一丁目境界にある坂。坂の東を走る世田谷通りに対して登戸道という旧道の坂道のようです。仙川大蔵水道橋付近の坂下から湾曲して東方向へ上る坂は坂上の日本大学商学部前を走る世田谷通りに合流します。

 

 

御茶屋坂   

小田急線成城学園駅南の成城三丁目にある坂。こもれびの庭市民緑地や成城三丁目緑地の中程を成城の台地上から喜多見平坦地の野川方向へ上る急坂です。一帯の崖地にあるそれぞれの坂道と同様にこの坂も西南にひらけた富士山方向を望む地点を選ばれていました。

 

 

なかんだの坂 

高級住宅地として夙に名高い成城の町の国分寺崖線の希少な眺望の地点にある坂の町の坂名は誠に鄙びた名称です。その意は現地の案内記で確認できますが一帯の環境は遥かな昔から人々にとって住むに値する適地であったことが納得できるような地点の坂道でした。

 

 

ビール坂  

小田急成城学園駅西の成城四丁目緑地の縁を北方向の雑木林のみちへ下る坂。国分寺崖線と言われる一帯の崖地は隣接の発明の杜市民緑地や十一山市民緑地などなどの武蔵野の雑木林の保護育成の思いの溢れた地域となっています。

 



森光宏明

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